失効した人は転職できない?教員免許更新制が廃止されたらどうなるの?
働き方改革も進んでいる教員業界ですが、教員免許の制度に大きな改革が行われたことはご存知でしょうか。教育業界を揺るがす「改正教育職員免許法」の成立です。この法律により有効期限はなくなりました。それでも、失効の可能性がある免許もあります。この記事では教育免許更新制に当てて、今後の対応を解説します。
教員免許更新制はなぜ始まったのか
そもそも、教育免許更新制はどうして始まったのでしょうか。日本における国家資格の中には更新というスキルアップ制度を導入することにより、知識や技能の低下を防ぎ、資質を維持していくという考え方があります。
教員とは子どもたちに教育を与える立場であり、技能の低下は子どもたちの未来に大きな影響を与えてしまいます。そこで、平成21年に教育免許にも更新制が導入されました。教育の質は国力にも影響することから、昭和58年より議論を重ねられてきたのです。
教員免許更新制の問題点
では、どうして教員免許を更新させる制度は政治の肝いりで導入されたにもかかわらず、廃止されるに至ったのでしょうか。本更新制は教員自らが自己負担金を支払い、約30時間以上にも及ぶ講習を受ける必要がありました。これでは教員の質の向上どころか、重い負担になってしまいます。
また、免許への意識の欠如から失効・失職に至るケースもありました。そもそも本更新制度は複雑なしくみで運営されており、教員側も制度の認識が難しいという問題点も抱えていました。教員は労働時間が多さも課題となっており、重い制度負担の見直しは急務だったのです。
免許状の有効期間は?
教員免許をお持ちの方にとって、気になるのは「免許状の有効期間」です。今回課題の多かった更新制自体はなくなりました。
しかし、すべての教員免許がいきなり復活するわけではありません。交付されたその時期によって、有効期限が異なっています。ややこしい違いがあるため以下をご参照ください。
免許取得日が2009年3月31日以前
2009年3月31日以前の免許状は「旧免許状」といわれています。旧免許状は更新制度が導入される前に発行されたものであり、有効期限はそもそもありませんでした。但し、免許には現職教員や教育長など、講習の対象となる方もおり修了確認期間が終わるまでに講習を受けていないと免許状は失効していました。
免許取得日が2009年4月1日以降
教育免許は更新制度の導入によって考え方が別れており、2009年4月1日以降は「新免許状」といわれています。(制度の導入後)新免許状は資格取得後10年後の年度の終わりに有効期限と設定されており、講習対象者は旧免許状と同じです。対象者は12グループに分けられており、幼稚園教諭や保育士も該当します。
2022年7月1日以降の教員免許状の扱いとは
多くの教育関係者にとって、更新制度の廃止で一番気になるのは、やはり今後の教員免許状の取り扱いではないでしょうか。2022年7月1日以降の取り扱いを以下にてわかりやすく解説します。
現時点で有効な教員免許をお持ちの方
現在有効の教員免許をお持ちの方(失効していない方)は、2022年7月1日以降は更新の必要がなくなり、生涯有効な教員免許として生かせるようになりました。但し、1つ注意点もあります。法改正はすでに行われましたが、2022年7月1日以前に有効期限を迎えた方は更新が免除になるわけではありません。
2022年7月1日以前に有効期限を迎えた方
本制度廃止の前に有効期限を迎えた方は、現在教員として活動しているかどうか、で差異があります。
まず、現職で教員として活躍している方は、有効期限を超えている場合免許が失効します。旧免許状も新免許状も同様の扱いとなっているためご注意ください。では、非現職の方はどうなるでしょうか。非現職の方は「休眠」と呼ばれる状態に置かれます。
休眠状態の方はどうすればいい?
非現職で教員免許が休眠状態となっている場合は、どのように「復活」させることができるでしょうか。休眠扱いで現在教員になるご予定がない場合は、継続して休眠状態が維持できます。
教員に戻る場合には、手続きは要らず自動で回復できます。休眠状態からの復帰は自動でできますが、現職に該当する方は失効するため、まずは所有する免許状の状態を確認しましょう。
休眠状態の教員については採用者側も注目しています。現在多くの教育委員会では教員の確保に苦戦しており、積極的に臨時的任用教員の採用を行っています。休眠中の方は復帰しやすい環境が整っているため、今後教員として活躍するチャンスが広がっているのです。
教員免許を失効している場合は?
2022年7月1日以前に教員免許が失効を迎えている場合には、各都道府県の教育委員会に再授与と呼ばれる申請を行う必要があります。
つまり、申請が無事に通れば今後は有効期限のない免許が得られます。このように教員免許更新制の廃止は色んな方々に影響を及ぼしていますが、働き方を前向きに変えるきっかけにもなるでしょう。
まとめ
この記事では教員免許更新制の廃止にスポットを当てました。失効や休眠の解説も踏まえながら紹介しましたが、いかがでしたか。
更新制がなくなったことにより、現在教員免許をお持ちで教育の現場から離れている方でも、教育委員会に手続きをする、あるいは自動回復のしくみによって現場に復帰しやすくなっています。
教育現場は働き方改革により、労働時間の削減も進んでいます。ご自身の未来を見据えて、今ある教員免許を有効に利用しませんか。