公立教員には残業代が出ない?その理由とは

公開日:2023/05/15  最終更新日:2023/02/24


近年、教員のオーバーワークが取り沙汰され、社会問題になっています。そればかりか、公立学校の教員には残業代が支払われない、という現況は改善されません。異業種から見ると「信じられない」と言わざるを得ない過酷な教育の現場は、特別なルールによって暗黙されているのです。ここでは公立教員には残業代が出ない?その理由を検証します。

教員の勤務時間は長い?可視化されている問題点

教員の勤務時間はどれほど長いのか、数字で見ていきましょう。

2022年、連合総合生活開発研究所(連合総研)のデータを参考に問題点を可視化します。
(参考:「2022 年 教職員の働き方と労働時間の実態に関する調査結果 中間報告 連合総合生活開発研究所」)

教員の時間外労働時間

連合総研の調査によると、教員の時間外労働時間は1か月123時間を超えています。一般企業の時間外労働の上限、月45時間を超えるばかりか、過労死ラインとされる月80時間を大きく上回っているのです。

勤務日の1日平均労働時間

勤務日の労働時間は平均12時間7分であり、所定の労働時間(7.45時間)に加えて4時間以上の残業です。この残業時間には、自宅に持ち帰っての仕事時間も含まれています。

週休日の在校時間

週休日にも在校している教員は多くいます。時間にして平均2時間6分、自宅に持ち帰っての仕事が1時間18分です。合計で平均3時間24分、週休日に仕事をしている計算になるでしょう。

公立教員には残業代が支給されない理由とは

これほど長時間の時間外労働、休日労働をしているにもかかわらず、公立学校の教員には残業代が支払われません。月額給与に4%を上乗せする「教職調整額」が支給されるため、時間外勤務手当と休日勤務手当は支給されないのです。これは給特法「公立の義務教育諸学校等の教員職員の給与等に関する特別措置法」で規定されています。

給特法では公立教員に時間外手当が支払われないので、原則的に残業を禁止しているのですが、緊急性のあるもの、校外学習、修学旅行、職員会議、非常災害など、例外的な場合に限り、一部残業を認めています。残業が認められていないのに、教員の在校時間は長く、週休日も労働時間が発生しているのはなぜでしょうか?

それは教員の平時の残業は命じられたものではなく、自発的に行ったものとみなされ、労働時間に換算されないためです。児童、生徒を指導する部活動の顧問、大会の引率や合宿の付き添いにおいても同様でした。

そもそも残業代の代わりに支給される教職調整額の月額給与4%は、現況の教員の時間外労働に見合うものなのでしょうか?

教職調整額、月額給与4%は1966年(昭和41)の教員勤務状況から算定されています。当時の公立教員の平均残業時間は、月に約6時間でした。上記に挙げた教員の時間外労働時間123時間とは比べるべくもありません。

進みつつある教員の働き方改革!

こうした公立教員の過酷な労働は、学校内だけでなく社会全体に大きな軋轢を生んでいます。過労死と思われる悲劇も報告され、うつなど精神疾患による休職が後を絶ちません。

身体的、精神的健康を保つためには、残業代を支給する、しないの議論よりも、残業時間を減らし、安定した休息時間を確保すべきでしょう。「教員はブラックだ」とのイメージも若者の間ですっかり定着し、教員採用試験の倍率は年々下がる一方です。

このままでは、人材不足によるさらなる超過勤務、ひいては教育の質の低下を招くといわれています。こうした現状を改善するために行政、自治体、そして教員自身が動き出しました。これまでに提案、実施された教員の働き方改革を紹介しましょう。

時短のためICTを活用

学校現場では未だに手書きのプリントや資料が多く存在します。それらをword、excel、power pointで作成、教員間で共有して個人の業務負担を軽減しました。保護者からの欠席連絡など、これまで電話でやり取りしていたものを、ICTによる連絡システムを構築しています。アンケートはプリントで配布されていましたが、電子アンケートに変更し、作成・配布・集計にかかる時間を短縮しました。

部活動を外部部活指導員に委託

これまで教員の顧問制であった部活動を、外部指導員に委託しています。この改革は達成率が高いものといえるでしょう。外部指導員を望む声は大きく、さらなる人材の確保を目指しています。

事務員・スクールサポーターの設置

学校事務員の業務の幅を広げ、教員の負担を軽減しました。成績処理や学校行事の準備・運営など、教員免許を持っていなくてもできる仕事を効率よく事務員に任せる体制になっています。学校内の消毒・清掃などに、教員は多くの時間を費やしてきました。

最近は地域ボランティアの力を借りて、教育環境を整えています。プリントの印刷や封入、授業準備など教員のアシスト的な役割をこなす、スクールサポーターの雇用は今後ますます増えていくでしょう。

まとめ

現状の教員は123時間を超える残業をこなし、オーバーワークで自身の健康をすり減らしています。にもかかわらず、給特法により、月額給料に4%上乗せされるだけで、実際の残業代は支給されません。教員の精神的病気休職者数は高くなり、教員採用試験倍率は下がる一方です。教員不足を止めるため、国や自治体、教員自身で様々な働き方改革が実施されています。

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